スペシャルインタビュー
フリーペーパー「灯台どうだい?」編集長 不動まゆうさん
初めて灯台を意識したのは、大田区にある城南島海浜公園に出かけ、離着陸する飛行機を眺めていた時のことです。夜になるとあたりにはいろいろな光が灯り始めます。飛行機の光、対岸の街を走る車のヘッドライト、海を行く船の光。それらに共通するのは、すべて通り過ぎていく光だということ。でも、一つだけ、海の中の同じ場所からずっと光を放ち続けるものがあったんです。それが「東京灯標」という、海に浮かぶ灯台でした。その定期的な間合で届けられる光に、心地よさを感じてしまいました。夜の海でぽつんとひとり、寡黙に仕事をする姿に健気さすら感じていたかもしれません。
日本の灯台は今年で150周年を迎えますが、「東京灯標」は100周年の時に建てられた特別なものでした。灯台自体のデザインにもテーマ性があって、そこが面白くて…それから灯台に興味を持つようになったんです。
灯台の楽しみ方はいろいろありますが、オススメは昼と夜の姿、その両方を見ることです。
灯台は船から光がよく見える場所に建てられるため、陸にいる人にとっても海の情景を満喫するにはうってつけの立地です。よく晴れた日であれば、青空に映える白亜の姿を楽しむことができます。
そして、灯台が仕事をしている夜の姿も壮大でロマンを感じます。その雄姿はぜひご自分の目で見ていただきたいです。大きなレンズを有する灯台であれば、光を放つレンズや光芒の美しさにきっと驚かれると思います。灯台って、時間の移り変わりによって変わる表情に魅力があるんです。実は私のオススメは明け方。まだ暗いうちに出かけ、まずは灯台が働いている姿を楽しむ。すると次第に太陽が昇り始め、朝焼けとなり、その光を受けて灯台が薄いピンクに染まる。そして地上に光が満ちる頃、“ふっ”と灯台の光が消える。その瞬間が切なくも美しいんです!
灯台にはいろんな魅力があると思います。日本の近代史の証人であり、明治、大正時代の灯台は建築物としても興味が尽きません。どこに魅力を感じるかは、人それぞれだと思います。私は灯台の光に心を奪われているので、あえてオススメするとしたら、大きなレンズを使っている大型灯台です。ちなみにレンズには等級があって、一番大きな第1等から3等までのレンズを持つ灯台を「大型灯台」と呼びます。中でも1等レンズの灯台は犬吠埼灯台(千葉県銚子市)、出雲日御碕灯台(島根県出雲市)、角島灯台(山口県下関市)、経ヶ岬灯台(京都府京丹後市)、室戸岬灯台(高知県室戸市)の5ヶ所しか日本にないので貴重な存在です。。3メートル弱の巨大なダイヤモンドのようなレンズが回転しながら光を放つ姿は、一見の価値があると思います。
昔は灯台が建つことでその土地は大きな恩恵を受けました。もし、いま住んでいる場所や故郷の近くに灯台があったら、地元の灯台として愛着を持ってください。灯台はその町の守り神のような存在であり、行けば、長い期間、風雪に耐え地元の海を見守る灯台に「何か」を感じることがあると思います。また旅先では灯台を目的地に加えてみてください。いわゆる観光地とはちょっと違ってアクセスも決していいとは限りませんが、灯台の造形や光、波の音など記憶に残る景色を楽しめると思います。
もちろん灯台周辺の漁港などで、美味しいグルメにも舌鼓を打てますよ!
GPSなどの機器により、灯台の必要性は昔と比べると減っているようです。無駄なものを省くという考え方を第一とするならば、今後、灯台は減少の一途をたどるでしょう。でも、灯台は本来の役割だけでなく、人々に安らぎや探求心を与える文化財だと思います。ヨーロッパに出かけるとローマ時代の灯台が今も残り、地元の人たちに愛される存在になっている。そんな風に日本の灯台も、地元の人と長く共存できる存在だと思うのです。
フリーペーパー「灯台どうだい?」
編集長 不動まゆうさん
灯台好きが高じて、フリーペーパー「灯台どうだい?」を自ら編集・発行する。
日本はもちろん、アジアからヨーロッパまで、灯台を見るためだけに出かけるほどの灯台マニアだ。
Italy
イタリアの大型船も入港する、大きな港に立つ灯台。石造りの風格ある構造で、歴史ある灯台。
France
灯台の王様と呼ばれる。1611年に建てられた(塔上部は1790年に拡張)。フレネルレンズが世界で初めて着いた。
England
イギリス・イーストボーンの崖の下に1902年から立つ灯台。赤と白の縞模様がとても可愛らしい。
Spain
フランスとの国境近くに建つ灯台。ガラスで透けた灯篭屋根が美しい。1881年に建てられた。
Scotland
宿泊できる灯台。かつては灯台守が住んでいた部屋が、ホテルとして活用されている。料理も美味しい三つ星ホテル。
Taiwan
台湾中西部に位置する灯台。なんといっても縦のストライプ柄が目を引く。私が訪れた5年前はまだ灯台守の方がいた。
不動まゆうさんのオススメは「大型灯台」
から見ることだったが、
もちろん、
その他にも楽しみ方はいろいろある。
今回は「アクセス」「ロケーション」「カタチ」
という
3つのキーワードから
灯台の魅力を紐解いてみた。
灯台のほとんどは海に面した場所に立つ。ただし、そのアクセス方法はさまざま。鬱蒼とした森の中をひたすら歩き続けなければならない灯台や、船をチャーターしなければならない灯台も。ここではそんな特徴あるアクセス方法別にセレクトしてみた。
険しい道を超えて!
海からよく見える場所に立つため、内陸からはアクセスしにくい場所に位置する灯台も多い。中には森の中に分け入って、冒険気分を味わいながら1時間ほど歩いてたどり着くような灯台も!
富山県高岡市
クルマで行ける!
漁港や海浜公園など海の近くにはさまざまな賑わいがある。その近くに立つ、アクセス至便の灯台も多い。城ヶ島灯台などクルマで近くまで行ける灯台は初心者にオススメだ。
神奈川県三浦市三崎町城ヶ島
橋を渡っていく!
内陸から橋が架けられ、まるで桟橋を渡って船に乗り込むかのようにアクセスする灯台もある。立地上、海に突き出すような場所に立っているので、四方に雄大な景観を見晴らすことができる。
新潟県糸魚川市
船を使って海からアクセス
瀬戸内海をはじめ、日本国内には多くの島があり、そこに立つ灯台も数多い。1日数本の船便を利用するしかない場合もあるので、島での過ごし方を考えてから出かけよう。
広島県三原市
中にはアクセスするだけでも大変な灯台もあるが、たどり着いた先には素晴らしい世界が広がっている。ここは日本か…と思うような「最果て感」を感じたり、のんびりとした馬が自然と戯れる姿を目の当たりにしたり。昼と夜で違う風景が楽しめるのも灯台ならではだ。
地の果てに見つける光
くだけ散る波しぶきが当たる絶壁の上に立つ灯台や、遠くから眺めると海に向かってポツンと立っている姿がわかる灯台など、日常からちょっと離れた「最果て感」が楽しめるのも、灯台ならでは!
北海道浜中町湯沸岬
自然と融合した姿が美しい
美しい海の景観との融合が素晴らしい、自然豊かなロケーションに立つ灯台も多い。例えば青森県「尻屋埼灯台」では海と空と灯台が作り出す絶景の中で、のんびりと放牧される地元産寒立馬の姿が見られる。
青森県東通村尻屋字尻屋崎
昼と夜で見せる表情の変化
暗い海を明るく照らすことが灯台の最大の目的だから、やはり夜の“働く”姿も楽しみたい。一番のオススメは、3m弱のレンズが光を放つ、第1等灯台。日本には5ヶ所しかない、今や希少な灯台だ。
山口県下関市豊北町大字角島
灯台には建築的な価値の高いものも多い。それは洋式灯台そのものが日本の近代化とともに歩んできたことと無縁ではない。日本の灯台の父リチャード・ブラントンが明治時代に設計したものから、全身ガラス製の灯台まで。ここでは色やカタチが特徴的なものを集めた。
日本の洋式灯台の礎ブラントン
明治時代に来日した建築家リチャード・ブラントンが手がけた灯台。7年半の滞在中、26の灯台を手がけ、「日本の灯台の父」と呼ばれる。
愛媛県松山市
白と黒がシックでオシャレ
白亜の姿が多い灯台にあって、白と黒のモノトーンが独特な風貌を持つ灯台。抜けるような青空と紺碧の海、そして緑の芝生と鮮やかなコントラストを描く。
秋田県男鹿市北浦入道埼字昆布浦
ガラスブロックのレトロさが魅力
透過性ガラスブロックで築かれ、夜になると内側からの光の照射によって、灯燈全体が赤く輝く、世界初のユニークなデザイン。「せとしるべ」の愛称を持つ。
香川県高松市サンポート(高松港)
大きなろうそくに光を灯して
城ヶ島公園の岩場の先に立つ灯台。下部にくびれを持つスマートなシルエットが、海を航行する船はもちろん、見るもの多くを惹きつける。
神奈川県三浦市三崎町城ヶ島
沖縄県石垣市の平久保崎灯台や新潟県糸魚川市の能生港灯台など、ハート型のモニュメントを用意している灯台もある。カップルはもちろん、家族や友人同士でも灯台を入れ込んで記念のカットを撮影してみては!
福井県越前町の越前岬灯台では、記念のかざぐるまを制作。両面にメッセージを書いて、願いを叶えよう。他にもハート型の南京錠(愛知県美浜町の野間埼灯台)など、ユニークなオリジナルグッズを用意した灯台も多い。